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(本気で考えた。)

さて。どうしようか。
祭屋宴は考える。
最早望まぬ。彼女は長寿願望などはもとより己の欲する道により屠られることを人生の前提としているためそれをつくるのが大層苦手であった。
【人生設計】【将来の夢】【進路希望】
能力者として、というよりも一人の人間として確約された明日というものがないことを単に理解しているだけで、能力者であるがゆえにぱっくりと口をあけた死に毎回首元まで飲み込まれるような生き方を望んでしている身として。明日生きているのか。という問いに正解をもち得ないのである。
より近づく。望んで。より飛び込む。踊るように。
一つ訂正するならそれは自殺願望と呼ばれるものとは違う。
彼女はその行為こそ否定するものではないと感じているが、彼女の持ちえるそれは死にたいという真摯な願いではなかった。むしろ彼女は人生を謳歌することに一生懸命であった。
将来の夢と聞かれて【生きていたい】と答えるほどには真面目に。
そのせいで能力者の存在を知る教師からこっそりと放課後に呼び出しを受け、説教をくらい、訂正を余儀なくされたことは彼女にとって何となく切ない思い出となっている。
(彼女が幼少の折、生死の境を彷徨い生きることにことさら貪欲になっているという事実は彼女すら知らないのである)


彼女が恋い慕い。己が身を差し出しても譲りたくないほどのものを抱擁するのがこの世界なのだ。
彼女に許され、彼女が持ちえるものはとても少ない。増えては減りを繰り返しそれは思春期の男女にありがちで、ナルシズムに溢れたくだらないもので。しかし世界の味方(正義ではない。決して)とも錯覚できる能力と覚悟をそろえてしまえばそれは幻想でなく現実になってしまった。要は彼女は子供なのである。
元来短絡思考で騙されやすく、思い込みの激しい性質は彼女をそのときのままに縛り付ける。願いは願いのまま。思いは思いのまま。それは形を変えず風化することもなく抱き続けていられるたぐいのもので。
祭屋宴は。彼女は強くない。己の死を己のために使えるほど強くない。理由を他人に押し付けることでしか己の死を享受できないだけなのだ。何の意味もない寂しいだけの死を迎えることこそ恐怖。自己欺瞞も甚だしく、それを他人のためになるのだと阿呆のような幻想に取り付かれ、それを実行しえる能力を持つがゆえに、彼女はいつまでたっても臆病者であり続けるしかない。それを実行することにより誰かを傷つけることすら厭わない。彼女はそれを理解している。
だから彼女はそれを望む。何の意味もない寂しいだけの死を迎えるより、燃えゆく炎のように。燃え尽きる寸前に輝く炎でありたいと願わずにはいられないのだ。
ゆえに彼女は苛烈であり続けなければならない。戦場に酔い暴力を手段としていなければならない。怨嗟を飲み下して笑うようなものにならなければ、その死を当然と受け入れられないのだ。望むがゆえ、臆病がゆえに脅える。しかしその脅える姿をさらせるほど彼女の矜持は低くなく、その矜持だけが彼女を生かす。生き急がせる。自らの理想のために。矮小というなかれ。阿呆といってくれるな。彼女にはそれだけしかないのだ。


深刻な文章ばかり並べて建てたところでなんてことはない。
彼女はただ提出する予定の紙になんと書けばよいのか頭を抱えているだけなのだ。
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